副甲状腺とは

副甲状腺の疾患イメージ

大きさは4~5mmぐらいで、甲状腺の周囲にあり副甲状腺ホルモンをつくる臓器です。多くの人は4つの副甲状腺を持っていますが、なかには3つ、あるいは5つ以上もっている人も稀ではありません。ここでつくられる副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウム濃度を一定の範囲内に調節しています。健康な人では、血液中のカルシウムが減ると副甲状腺ホルモンが増加します。そうすると骨に蓄えられているカルシウムが血液中に溶かし出されてカルシウムが正常な濃度にもどります。

原発性副甲状腺機能
亢進症とは

副甲状腺機能亢進症とは、血液中のカルシウムが正常またはそれ以上あるのに、副甲状腺ホルモンが必要以上につくられる病気です。そのために骨の中のカルシウムが減少して骨粗鬆症になったり、腎結石(腎臓や尿管に結石が生じる病気)や消化性かいよう(胃・十二指腸などにできる)、膵炎など、他にも様々な症状を引き起こすことがあります。

対象となる方は、閉経後の女性が多く、50歳以上の女性に限ると1000人に1人くらいの頻度と推定します。副甲状腺機能亢進症は決して稀な疾患ではなく、今後高齢化と共にますます増加すると考えています。

主な症状

  • 食欲がない
  • いらいらする
  • 身体がだるい
  • 集中力がない
  • 頭痛がする
  • など

副甲状腺機能亢進症と骨粗鬆症

骨粗鬆症の診断で治療を受ける患者さまが増えていますが、骨粗鬆症の診断と治療において、原発性骨粗鬆症(原因が特定できない)と2次性骨粗鬆症(何らかの原因によって発生している)とを鑑別しなければなりません。理由は治療方法が違うからです。

副甲状腺機能亢進症で2次性骨粗鬆症を生じますが、この原因を見逃すと“ビタミンDやカルシウム”の内服治療を受け、ますます血液中のカルシウムが高くなり、場合によっては命の危険まで生じることがあります。

副甲状腺機能亢進症の診断

血液中のカルシウムの濃度と副甲状腺ホルモンが両方高く、尿中カルシウム排泄量の高い場合、副甲状腺機能亢進症と診断されます。家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(遺伝性の病気で尿にカルシウムを排出しにくいので、血液中のカルシウムが高くなる病気で、手術は必要なく経過観察だけでよい病気)の方も同じような検査結果のことがありますが、尿中のカルシウム排泄量の測定で識別できます。

副甲状腺機能亢進症の原因

副甲状腺の1つだけ(稀に2つ)が腫れて、どんどんホルモンをつくる腺腫が大半の原因(約80~90%)で、4つの副甲状腺が必要以上にホルモンをつくる過形成は約10~15%です。がんによる原因は100人に1人か2人と稀です。

検査と治療

超音波とシンチ検査で9割程度病的な副甲状腺の位置がわかります。過形成をきたす遺伝性疾患として多発性内分泌腫症(Multiple endocrine neoplasia、以後MENと略)があります。最近原因遺伝子が発見されましたので、必要な場合は遺伝子検査をおすすめいたします。

現時点では、外科的切除が唯一の治療法になります。
術前の部位診断がついていなくても基本的には手術をすすめています。理由は早い時期に手術で病気を治すことが大事と考えること、ほとんどの症例で手術時に探し出すことが可能なこと、手術の合併症もほとんどなく手術による患者さまの身体的負担は少ないことなどの理由によります。

手術について

全身麻酔をしますので、心臓(心電図)、肺機能、肝・腎機能検査(血液や尿)は必要です。

手術方法

腺腫では1つあるいは2つの腫れた副甲状腺だけを摘出します。
副甲状腺は5つ以上あることもあるため、過形成ではすべての副甲状腺を探し出し、一番正常に近いと考えられる副甲状腺の一部を残して他の副甲状腺をすべて摘出します。症例によってはすべての副甲状腺を摘出して、一部を前腕などに移植します。がんでは周囲組織を含めて広範囲に取り除く必要があります。

術前にがんの確定診断がつくことはほとんどありませんし、迅速病理検査(手術中に行う組織の顕微鏡検査)で悪性かどうかの判断は非常に困難ですので、手術中の医師の判断が非常に重要です。

手術の合併症

この病気の性質を十分にわかっている内分泌外科がおこなえば合併症はほぼありません。
甲状腺周囲を扱いますので、反回神経麻痺(声帯を動かす神経で麻痺が生じると声がかれる)の可能性はありますが、副甲状腺がんなどの特殊な場合を除いて非常にまれで、ほとんどは一過性です。その他、一般的な手術と同様に出血(血管を結んだ糸が術後の嘔吐やくしゃみなどで糸がはずれ、頸のなかに血がたまる)のために再度傷を開き止血しなければならないこと(1%以下)、傷が化膿(3000~4000例に1例程度)することなどの可能性があります。

手術後のカルシウム低下

手術後カルシウムが低くなり、カルシウムやビタミンDを飲まなければならないことがあります。これは主として以下の2つの理由によるものです。

  • 手術前は副甲状腺ホルモンがどんどんつくられており、このホルモンが骨から血液中にカルシウムを溶出していたが、術後は反対にカルシウムが骨に取り込まれるので、血液のカルシウムが低くなる。
  • 副甲状腺ホルモンをどんどん出していた病気の副甲状腺を取り除いたので、残った正常な副甲状腺はしばらくの間働きが悪い。

手術の合併症ではありません。自分の身体が良い方向(術後の骨の回復)に向かっているとお考え下さい。

院長
古賀 健一郎
診療内容
甲状腺、乳腺外科
TEL
093-383-5833
住所
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福岡県北九州市小倉北区紺屋町5-5 小倉パークビル2階
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